当院のケアとは

「日本の女性は産後に骨盤が緩んでいる早いうちから、立って動いてしまうから、
骨盤の下が開いてゆがんで、一生腰痛に悩む。 そして骨盤を贅肉で補強しなければならないから、 子供を産むと四角い大きいお尻になる。」
みなさんご存知でしたか?

お産がこんな後遺症になって、たくさんの女性が何十年も辛抱してきたとは。ちょっとショックです。しかも産科的には問題視されてません。今現在、お産の後遺症の腰痛で苦しんでいる女性がいると思うと、身体の負担の大きさはもちろん、原因がわからない為自己管理もできず、周囲に理解も得られずおそらく精神的にも大きなダメージでしょう。なんとか予防できないか?これは間違いなく助産師の仕事です。そこで「骨盤が緩む」とはどういう状態なのか、学生時代に調査してみました。

妊娠が始まると、ごく初期からレラキシンという靱帯をゆるめるホルモンが出ます。これが骨盤の仙腸関節や恥骨結合の靱帯をゆるめるので、妊娠中から産後2ヶ月ぐらいまでは、図のピンク色の線の部分にあたる骨盤輪がガタガタした状態になっています(*1参考図)。
赤ちゃんが通るためとはいえ、この生理的変化が大きく、骨盤輪が異常にガタついている場合を骨盤輪不安定症といいます。
整形外科では診断に片足起立時の恥骨結合のレントゲン像を使ったりします。産後のお母さんの恥骨がどのくらい開いているかを私が、実際に超音波断層法を使って調査したと ころ、産後1日目で平均11㎜ぐらいでした。産後5日目で骨盤周囲を押して痛みがない人は、その幅が平均約6㎜と狭くなっていきますが、痛みのある人はまだ平均約12㎜と、回復が遅れていました。
ですから、お産の退院後、まだ症状がある人は本症の予備軍といえるでしょう。
骨盤
*1参考図
<症状>
腰痛、恥骨部痛、仙骨部痛、股関節痛、膝痛、足のしびれ感が代表的で、特に腰痛では、腰を使う動作で起こるというより、立ち上がる時や寝返り時、中腰姿勢、階段の上り下りに、「腰が割れそう」と表現されることが多いです。放置しておくと歩行困難が出てきて重症化することもあります。骨盤が緩むので痔や子宮下垂、尿漏れも起こります。ひどい症状への移行は数ヶ月から数十年してからのこともあります。
さらに、これは整形外科領域では証明されていませんが、もっと大多数の人に起こる影響として、骨盤が支えている脊椎が歪んできて、肋骨や肩甲骨が下がることにより、肩こり、背部痛、首痛、頭痛、呼吸機能低下や内臓機能の失調から疲労感や抵抗力の低下が起こることも十分考えられます。産後にこれらが出ると、母乳分泌にも影響します。

<治療>
整形外科的に考えると産後早期からの骨盤輪固定と、症状が強い場合は安静です。またお産が発症の契機であるのは事実ですが、妊娠中から症状がでている場合は、発症のメカニズムは一緒ですから、その時点で骨盤輪固定が必要と考えられています。
産後早期の歩行やウエストニッパーの使用は、骨盤を無理に歪ませるので、骨盤輪不安定症を誘発すると考えられます。特に経産婦や、急に進んだお産、急にすすめたお産、大きい赤ちゃんだった場合は要注意です。

ところで一方、自律整体(創始者 野澤尚史氏)では
骨盤がゆるんでいるから痛みが出るという「症状」に対する「骨盤輪の固定」という対応の前に、西洋医学では説明のつかない、「症状」の原因の原因を説明されています。
つまり、どうして同じようにレラキシンが出ても、骨盤輪の可動性に個人差があるのかという問いについてです。

氏は、恥骨痛にしろ後ろの仙腸関節痛にしろ、その他の身体の様々な症状は、まず股関節の可動性に問題があって関節周辺の筋肉や靱帯が硬くなってバランスが崩れてくる為、異常に可動したり、歪んでしまうことが原因と考えられています。

自律整体の基本理念は、「そもそもあらゆる身体の機能は、筋肉の運動要請という生命の必然性から合目的的に創り上げられている。したがって、正しく筋肉が作動すれば、身体の機能はその目的遂行のために無意識に修正、復活する。そして、その筋肉の動きのすべては骨盤の、中でもとりわけ股関節の動きに規定される。身体の歪みのすべては、股関節の間違った可動域から生じるものである」と野澤氏は説かれています。

また、その股関節の間違った動きの原因は、もともと胎内環境から始まって生育歴から積み重ねられた癖であって、そのプログラムが脳にある以上、いくら矯正しても戻ってしまうと考えられるのです。
このことから、骨盤輪不安定症も股関節の筋肉アンバランスを脳レベルで正すことが根治療法であり、骨盤輪を固定することは不要であるばかりか、かえって骨盤の関節を損なう可能性もあると説かれます。

以上の点をふまえて、当相談室では、主に活点繰法によって骨盤のバランスを整え、体操を通して身体の癖治しを指導することにより、乳房トラブルも含めて、身体の自己管理の方向を探っていきたいと思っています。但し、このページだけをご覧になって、何かすぐ対応をお探しの方は、対症療法であることを十分ご理解の上、さらしやベルトによる骨盤輪の固定をされてもよいでしょう。

参考文献
著  者 書 籍 名 等
平田 満郎 「いわゆる骨盤輪不安定症候群について」産科と婦人科 1982
尾崎 浩士 他 「妊娠と歩行障害-とくに骨盤輪不安定症と恥骨結合離開」a
田中 宏和 「骨盤輪不安定症-その臨床的解剖学的研究」日整会誌 1981
森 晴代 他 「産後の不定悠訴~骨盤輪不安定症の一考察」京大助産婦同窓会誌 1990
島岡 由紀子他 「腰痛のケア~骨盤輪不安定症などの関連から~」
助産婦のための退院指導マニュアル ペリネイタルケア’98新春増刊:三井 政子編 1998

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